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ショートエッセイ#1『アツアツコーヒーを一瞬で冷ます方法』


 先日とあるテレビ番組で、アツアツのコーヒーの味も量も変えることなく一瞬で冷ます夢のような方法が紹介されていた。その方法とは、「コーヒーをソーサーにうつしてソーサーから飲む!」

これはもともとイギリスやフランスでの作法であったが、今でもフィンランド(コーヒー消費量世界一の国)ではよく知られた方法らしい。確かにこの方法ならばコーヒーは一瞬で冷めるし、味も量も変わらない。もっとも、私たちからすると少し抵抗のあるやり方かもしれないが。

 コーヒーの熱を冷ます最も効果的な方法は、コーヒーそのものを別の場所にうつすことである。これならばコーヒーそのものの味をそこなうことなく冷ますことが出来る。そしてこれはなんでも当てはまるやり方ではないだろうか。お茶を入れる際のお湯、料理の際の荒熱、サウナに入って火照った身体。熱を帯びたものは、場所を移すだけで冷ますことが出来る。

 私たちは、様々な課題や問題、悩みや痛みの中で生きている。私たちの人生は、さながらアツアツコーヒーではないだろうか。そして、そうであるならば、私たちの人生の荒熱をとる方法も、コーヒーと同じで「場所を移す」のが一番であろう。それも、あのコーヒーがソーサーに移されたように、まったく別の場所に移される必要がある。残念ながら私たちの日常は一続きであり、なかなか荒熱を冷ますほどの移動は叶わない。しかし、教会の礼拝ならば、それがかなうはずだ。

 もし礼拝に対して、とっつきにくいとか、退屈そうであるとか、距離感を感じているならば、その感覚は正しい。なぜなら礼拝とは、私たちが日常から離れる瞬間だからである。普段とは違うところに身を置いて、今まで知り得なかった聖書や神様の話に耳を傾けるとき、それは私たちが日々の荒熱を冷ます瞬間でもあるのだ。